大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和27年(あ)4654号 判決 1953年12月25日

本籍

佐賀県佐賀郡鍋島村大字八戸溝一一五二番地

住居

同県同郡松梅村大字梅野字都渡城

会社員

立川康勝

大正八年一月四日生

右公文書偽造、同行使、私文書偽造、同行使、詐欺、恐喝被告事件について昭和二七年六月二一日福岡高等裁判所の言渡した判決に対し被告人から上告の申立があつたので当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人山本新の上告趣意第一について。

右は憲法違反を主張するけれども、その実質は訴訟法違反を主張するに過ぎないから適法の上告理由とはならない。(原判決の説示中妥当を欠くの憾ある点もないではないけれども、原判決の趣旨とするところも記録にあらわれた全証拠を検討しても第一審判決に事実誤認の違法ありとは認められないというにあること原判文の記載全体からうかがわれるのであるから、原判決の所論説示を以て違法とするに足りない。)

同第二について。

何人かによつて真正な文書と誤信せられる危険あることを意識して、文書を偽造する以上「行使ノ目的ヲ以テ」文書を偽造するものと解して差し支えないのであつて、偽造者自らこれを行使する意思あると他人をして行使せしめる意思あるとは問うところでない。

本件第一審判決の認定するところは「被告人は藤崎定において、これを真正なものとして行使することを知りながら証紙を偽造して、これを同人に交付した」というのであるから、原判決がこの事実に対して、たとえ藤崎定がその情を知つていたとしても、被告人が、行使の目的を以て本件証紙を偽造したものと解するを相当とすると判示したのは正当であつて、所論掲記の右判例に抵触するところはないのである。

同第三は上告の適法な理由とならない。

また記録を精査しても、刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

よつて、同四〇八条により主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎 裁判官栗山茂は出張につき署名押印することができない。裁判長裁判官 霜山精一)

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